水域保全学研究室とは

淡水・海洋生態系における多様性へ理解の深化と共存・共生にむけて

水域保全学研究室では、人と水域生態系(淡水および海洋生態系)との調和を目指し、その豊かな多様性がどのように創出され、どう保全していくべきなのかについて研究しています、主に干潟およびサンゴ礁生態系を対象としつつ、より深い陸棚海域のサンゴ類や河川の魚類など、幅広く淡水・海洋生物の研究をしています。干潟では現地調査での観察・実験を通して、生物の基礎的な生態を解明する研究が実施されています。特に絶滅危惧種のトビハゼの基礎的な生態やアカエイ、カニなど干潟の生態系エンジニアによる環境と生物の相互作用などを明らかにしています。

サンゴ礁生態系では、海洋無脊椎動物の初期生態や遺伝的多様性を明らかにすることで海洋保護区を設定するために重要な海域の選定に貢献するほか、気候変動で急速に温暖化し、変化しつつある沿岸生態系を保全する方法を模索するため、北限域のサンゴ群集の共生、進化や生態についても取り組んでいます。一方、サンゴをはじめとした海洋無脊椎動物の生物多様性の起源を明らかにするべく、インド洋太平洋スケールで集団遺伝学的解析や系統地理解析も行っています。さらにサンゴ捕食者であるオニヒトデの嗅覚受容体や捕食行動パターン、サンゴ礁における海水からのサンゴのストレス検出方法の開発など、今まで未解明だった基礎的な知見や生態系のダイナミクス・重要性を解明する研究を実施しています。

yoshiヨシ帯(茨城県北浦)
higata1干潟(多摩川河口)
naiwan内湾(静岡県浜名湖)
干潟には希少な生物が生息しています。
また、水質の浄化作用や生物の産卵場、餌場としての機能を果たしています。
東京近辺でも豊かな水域生態系が現存しており、人々の暮らしを支えています。

 

ユビエダハマサンゴのサンゴ礁(沖縄県石垣島白保海域)アオサンゴのサンゴ礁(沖縄県石垣島白保海域)
石垣島白保海域は保護区となっている海域で、多様なサンゴが生息しています。特に南側には、ユビエダハマサンゴや
アオサンゴのマイクロアトールとよばれる、水面ぎりぎりまで発達したサンゴ礁が見られます。

浅場のサンゴ礁(沖縄県石西礁湖ヨナラ水道近く)国内に生息する太平洋種のオニヒトデ(Acanthaster cf. solaris )
サンゴ礁生態系は美しく、海洋の生物多様性の3割を占めるほど豊かな生態系です。
一方で、気候変動、水質悪化、食害被害によって近年衰退傾向にあります。
基礎的な研究を重ね保全に繋げていくことがますます重要です。

 

調査の様子
フィールドでの生物の採取・観察にも重点を置き、研究を実施しています。