要約 Tatematsu et al. (2014)

Influence of artificial headlands on fish assemblage structure in the surf zone of a sandy beach, Kashimanada Coast, Ibaraki Prefecture, central Japan

Tatematsu S, Usui S, Kanai T, Tanaka Y, Hyakunari W, Kaneko S, Kanou K, Sano M.

茨城県鹿島灘の砂浜海岸に設置されたヘッドランド(人工岬)が磯波帯の魚類群集構造に与える影響

立松沙織・碓井星二・金井貴弘・田中裕一・百成渉・金子誠也・加納光樹・佐野光彦

 

要約 砂浜海岸におけるヘッドランドの設置が磯波帯の魚類群集構造に及ぼす影響を明らかにするために,茨城県の鹿島灘海岸において,ヘッドランドの周辺区域,隣接したヘッドランドとの中間区域,ヘッドランドのない区域(対照区)の3箇所で,2012年と2013年の夏季と秋季に調査を行った.沖からの強い波浪が遮蔽されることで,ヘッドランドの周辺区域では他の2区域よりも,波浪の穏やかな環境が創出されていた.そのため,周辺区域では波浪による底土の攪乱が少なく,粒径の小さい土やデトリタスが多く堆積していた.一方,隣接したヘッドランドとの中間区域では,波高などの物理環境は対照区と有意な差が認められなかった.魚類の種数と個体数はヘッドランド周辺区域で顕著に多く,種組成も他の2区域とは明瞭に異なった.これはヘッドランド周辺区域において,体長20~50mmの小型魚や表・中層遊泳魚が多く出現したことに起因していた.一般に小型魚は遊泳力が弱いため,波浪の穏やかな水域を選好する.このため,ヘッドランド周辺区域に小型魚が多く出現したと考えられた.また,表・中層遊泳魚は激しい波浪の中では体勢を保持しながら遊泳することが難しいため,ヘッドランド周辺区域に集まったと推察された.反対に,波浪の激しい中間区域や対照区域では,砂に潜ることで波浪に耐えることのできる底生魚(バケヌメリやクロウシノシタ)が優占していた.本研究の結果から,ヘッドランドの設置は周辺海域の物理環境を変化させ,砂浜海岸の汀線域でみられる本来の魚類群集とは大きく異なった魚類群集を形成させることが明らかとなった.

Fisheries Science, 80: 555-568.2014年5月.

 

鹿島ヘッドラン#18:120710-16

鹿島灘海岸のヘッドランド