要約 Tanaka et al.(2017)

Effects of the bioturbating crab Macrophthalmus japonicus on abiotic and biotic tidal mudflat characteristics in the Tama River, Tokyo Bay, Japan.

Tanaka Y, Aoki S, Okamoto K.

多摩川河口におけるヤマトオサガニが泥干潟底質の生物的・非生物的環境に及ぼす影響

田中裕一・青木茂・岡本研

 

要約 干潟生態系において,底質を攪拌しその性状を改変する底質攪拌者bioturbatorの重要性は多くの研究で指摘されている.底質攪拌者は底質粒子の移動のさせ方により大きく4つのタイプに分類されるが,これまでの底質攪拌者の研究で扱われてきたのは底質粒子サイズの鉛直方向の分布を改変するupward conveyorやdownward conveyorが主であった.本研究では,造巣性甲殻類のヤマトオサガニMacrophthalmus japonicusを材料に,底質を攪拌するも底質粒子サイズの分布は改変しないregeneratorが,干潟の底質環境に及ぼす影響を,多摩川河口の二か所の泥干潟で行った排除実験により明らかにした.実験により,ヤマトオサガニは底質中の有機物量や含水率を低下させること,底生微細藻類の一次生産量を低下させることなく現存量を低下させることが分かった.このことから,regeneratorは,底質粒子サイズの鉛直分布を変えることで低湿環境を改変する他のタイプの底質攪拌者と異なる作用機序で低湿環境を改変することが示唆された.

Plankton & Benthos Research, 12: 34–43. 2017年2月.