要約 青木ら(2016)

房総半島内房の開放的な砂浜海岸と保護的な砂浜海岸における魚類群集構造の比較.

青木友寛・碓井星二・金井貴弘・青木 茂・岡本 研・佐野光彦

 

要約 2014年12月,2015年3,7,9月に,千葉県房総半島内房の開放的な砂浜海岸(大佐和,保田,波左間)と保護的な砂浜海岸(上総湊,多田良,那古)において,物理・生物的環境と魚類群集の構造を調べ,それらを砂浜海岸のタイプ間(開放的・保護的)で比較した.いくつかの物理的環境(波高と濁度)は砂浜海岸のタイプ間で異なっていたが,生物的環境(魚類の餌となる浮遊性,表在性,埋在性無脊椎動物の個体数)と魚類群集構造(種数,総個体数,種組成,主要な食性グループの種数と個体数,優占種の個体数,体長組成)にはタイプ間でほとんど違いはみられず,多種多様な魚類が生息していた.したがって,房総半島内房の砂浜海岸は開放的か,保護的かにかかわらず,魚類にとって重要な生息場となっていることがわかった.今後,内房の砂浜海岸において魚類の種多様性や個体数密度を高いレベルで維持していくためには,砂浜海岸のタイプにとらわれず,それぞれの海岸の環境を適切に管理,保全していくことが必要であると思われる.

日本水産学会誌, 82: 569-580.2016年6月.