要約 宍戸ら (2019)

東京湾内湾に造成された人工砂浜海岸における魚類群集の構造

宍戸太郎・青木茂・金子誠也・佐野光彦

 

要約 千葉市美浜区において1970~80年代に造成された3つの人工砂浜(いなげの浜,検見川の浜,幕張の浜)で,魚類を複数の月(2017年9月,11月,2018年5月,7月)にわたって採集し,魚類群集の構造を調べた.また,その群集構造を砂浜間で比較した.調査期間を通して,3つの人工砂浜で合計19科23種1091個体の魚類が採集された.優占種は,スズキ,イシガレイ,コノシロ,トウゴロウイワシ,アユの5種であり,これらで全採集個体の87.4%を占めた.採集された個体のほとんどは稚魚であり,本調査地の人工砂浜は様々な魚種の稚魚にとって,重要な生息場の1つとなっていることが示唆された.3つの人工砂浜間では,種数,総個体数,種組成に違いはみられなかったものの,検見川の浜では体長の小さな稚魚が多く採集された.検見川の浜の両端には,内側に湾曲した突堤が存在するため,この浜は保護的な環境となっており,波浪は穏やかであった.検見川の浜には,遊泳力に乏しい小さな稚魚が,波浪の影響を避けるために多く集まったものと考えられる.

La Mer, 57: 1–23.2019年6月.